【三日目】

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鼻歌交じりに歩み去る背を見送ってから、エレメイは小さな声で言った。 「……どうやらナンパのようですが」 「え? ええ、はい……あの、今の言葉は何処の……?」 英語でもフランス語でもなかったような。 「イタリア語です、可愛いと言ってました」 そうか、それで旅行客と誤魔化した……? *** 夜、恵里佳の部屋を訪ねる。 「お風呂行きましょ」 入るなりぐいぐい背中を押されて、バスルームへ連れ込まれた。 「盗聴器の有無は宮殿の人が調べてるの、一応ないとは言われてる。信用しないのは嫌だけど……さすがにバスルームにはないと信じたいわ」 お湯が溜められていて、浴室内は湯気が充満していた。 「入りましょ」 え、カムフラージュじゃないの? 恵里佳は目の前でドレスを脱いでいく、私も仕方なくカットソーとガウチョパンツを脱ぐ。 二人で向かい合わせに湯船に浸かった。 「渚沙、何があったの? あなたが席を立ってから、エレメイがイライラしてたわ」 「それが……」 ティモシーに聞いた事を、小さな声で話した。 「殺、人?」 私は頷く。 「多分エレメイだろうって。ねえ? もしその件にマルグテ夫人も関わっていたとしたら、暴いて欲しくない?」 恵里佳は首を横に振った。 「ユルリッシュ殿下が殺されたなら、それを隠しておくほうがおかしいわ」     
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