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【四日目】
朝食を終えると、恵里佳と二人で散策と称して宮殿内をうろつく。
「普段自由に行き来してるのは、中央棟だけよ」
棟とは言うが、建物が分かれている訳ではない、全体はコの字になっている。
「自由と言っても、いつも知っているところを、誰か一緒だけど……」
恵里佳は少し不安そうに言う、あまり知らないところは迷子になりそうだと言った。
うろうろしながら……さりげなく、西棟へ。その端にある、とんがり屋根の部分が西の搭だ。それは東側にもある。
西の搭に入るには一階からしかなかった。でも廊下の端からでも判った、警備がいる、しかもお城の警備や近衛じゃない、黒ずくめのスーツ姿……。
私は息を呑む。
「……昨日見た写真の人たち……」
「本当!?」
エレメイの仲間って事だよね? そんな人達が、どうして警備なんだか監視みたいなことをしているの?
あ……しまった、気付かれた、一人が近づいてくる。
「行こう」
小さな声で言って、恵里佳の手を引いた。
でも恵里佳は動かない、それどころか真っすぐ搭に向かって歩き出す。
「恵里佳?」
小さく非難したけれど、恵里佳、あなた肝が据わってるわね。
男の一人と相対すると、スカートをつまみあげて、優雅に一礼した。
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