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『精が出ますね。パトロールですか?』
恵里佳はこちらに来て覚えたフランス語で聞く。
「恵里佳様」
男は英語で返した。
「ここには誰も近づけるなとお達しが出ております。お戻りください」
「それを言ったのは誰? ハルルートなの?」
「お答えしかねます」
「何があるの?」
「お答えしかねます」
「ハルルートに聞いたら判る?」
「それは恐らく、お判りにはならないかと」
「そう」
恵里佳はにこりと笑って踵を返した、五歩も下がって待っていた私と合流する。
止まることなく歩いて行く恵里佳の後を、慌てて追う。
「恵里佳?」
「城の人間じゃない者が守るエリアがあるって、おかしいでしょ」
恵里佳は怒っていた。
「うん……」
「情けないわ、ハルルート。こうなったら、何が何でも暴いてやるから」
ずんずん歩いていく恵里佳……いや、王妃様、いいの……?
***
夜、恵里佳が私の部屋を訪ねてくる。
「本当に、ハルルートったら!!!」
相当お冠だ。
西の搭の事を根掘り葉掘り聞いたけれど、ハルルートは何も知らないらしい、挙句に「母に聞いてみる」と。
「お義母様の耳に入れたら、どうなることやら」
恵里佳の苛立ちも判らなくもない。
なんでもかんでも母親頼りで、この先王様が務まるのだろうか。
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