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【それは突然動き出す】
翌日、朝食の席で。
「昨夜も随分遅くまで語らっていたようですね」
マルグテ夫人が睨むような視線の中で言う。
「はい、本当に、なにをそんなに話すことがあるんでしょう」
恵里佳がにこやかに答えた、勿論、ユルリッシュ皇太子の事件の話なのだが。
「式はいよいよ明日です、今日が独身最後の日ですからね、ご友人と少し遠出でもなさったら」
マルグテ夫人は眉間に皺を寄せたまま提案する。
「まあよろしいんですか!?」
私もびっくり、準備で忙しいんだろとか言ってじゃん?
「いいなあ、僕も行きたいなあ」
ハルルートが言うと、マルグテ夫人は睨み付けた。
「あなたは準備がございましょう」
言われてしゅんと落ち込むハルルート、本当に頭が上がらないんだな。
「晩餐会までには戻るのですよ」
「はい、ありがとうございます、お義母様」
***
車で宮殿を出て、坂道を下る。
間も無くしてだ。
「あれ?」
運転手が声を上げる。
「ガブ? どうしたの?」
恵里佳が声をかける。
「あ、いえ、その……ブレーキの効きが、悪いような……」
「ええ?」
「う、わ、え……っ! 悪いどころじゃありません! 効かないです!」
「ええ!?」
私と恵里佳は同時に声を張り上げた。
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