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車はどんどんスピードを上げる、運転手はなんとかハンドル操作で一つ目のカーブは曲がれたけれど、次のカーブは……!
「ガブリエル!」
恵里佳が思わず叫ぶ。
「嘘でしょ!」
私は日本語で叫んでいた。
ガードレールを突き破る衝撃と、急激な降下。
10数メートル下は、海だ。
どうしよう、と思っている間に水面に叩きつけられた。
「私達を殺すって事!?」
私は叫んでいた。
「お義母さま、相当追い込まれたのね」
恵里佳はのんびりだ。
「えと! とにかくドアを開けよう!」
「もう開かないわ」
「窓は!」
「駄目、電気系はイかれたみたいね」
「窓を割って……!」
運転手のガブリエルが慌ててダッシュボードを開けて、中をガサゴソ探す、窓を割る道具でもあるのだろうか。
その時視界の端に水飛沫が上がるのが見えた、誰かがクロールで近付いてくるのも判った。
車に掴まったのはカルロだった。持っていたナイフの柄で、助手席のドアを叩き割る。
「エレメイの動きが怪しかったので、後をつけて正解でした。ご無事ですか?」
にこやかに言う。
「あまり無事ではないわね」
恵里佳は余裕で答える、カルロは微笑んだ。
「既に事態は知らせてあります、救助はまもなく来るでしょう。泳ぎに自信がない人は?」
すぐさまガブリエルが手を挙げた。
「お、泳げません……!」
カルロは嘆息した。
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