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車の窓が半分程水に沈んだ時、私達は手を離して泳ぎ出した。
恵里佳が私を気遣いながら泳いでくれている、ああ、優しいなあ。
でも、水温の所為か、体がうまく動かない、やっぱり服をもっと脱いだ方が良かったかなー。
手をどんなに掻いても陸が近付かないと感じる、その事に気力が奪われる。
頑張っても、助からないかも。
「渚沙、しっかり!」
平泳ぎで泳いでいた恵里佳が声をかけてくれる。更に腕を引っ張ってくれる。
それじゃ駄目だと思ったのか、抱き締め、顎に手をかけてくれる、恵里佳は立ち泳ぎだ。
でも判る、恵里佳がそんなことしてたら、一緒に沈んでしまう。
私は闇雲に恵里佳を押した、だって王妃様だよ、この国にはなくてはならない人なのに、私なんかと死んだりしたら……。
「渚沙!」
シルヴァンの声がした。そちらを見るとモーターボートが近づいて来るのが見えた、船首で身を乗り出すシルヴァンも。
「渚沙!」
また声がする、その姿が水にぼやけた。
シルヴァンが水に飛び込む姿が見えた、馬鹿だなあ、水、冷たいのに。
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