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私は水の中で呼吸をしていた、当然肺に満たされるのは空気じゃない、水だ、でも不思議と苦しくなかった。キラキラ光る泡が水面に向かって上がっていくのが綺麗だなとか思ってた、それ越しに見えるシルヴァンも、綺麗だなぁ……。
腕をシルヴァンに引かれる、助けようとしてくれてる? 馬鹿ね、私なんかより王妃様助ける方が先でしょう……?
ああもう、体に力が入らない……私、死ぬんだ。
***
目が覚めたのは、病院だった。
恵里佳が付き添ってくれていた。
ベッドに頬杖ついてニコニコしてる。
「よかった、恵里佳は無事だったんだね、って、な、なに……?」
そのニコニコぶりが気持ち悪かった。
「んふふーっ! もお、シルヴァン殿下の取り乱しようったら! 動画に撮りたかったわ!」
「え、そうなんだ……?」
「渚沙が死んだって大騒ぎでね、カルロに心臓マッサージをさせろって殴られてたわよ! でもねえ、死ぬな、死ぬなってあなたを抱き締めてたんだから」
ああ、何故その記憶が私にないー?
「全くもー、王妃の私なんかガン無視よー、まあいいけどー、イケメンの慌てぶりって、美味しいわねーっ!」
「そですか……それで、一体何が、どうなったの?」
曰く。
どうやらエレメイが車に細工をしたらしい、車の近くにエレメイがいたのを運転手のガブリエルが見ていたのだそうだ。
声を掛けたけれど「落し物を探していた」とか言っていなくなったと。
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