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「わたくし、カルロ・カステッリの権限により、マルグテ・ヘフゲン夫人を拘束致します」
彼の一言で数名の近衛兵がマルグテ夫人を捕らえ連行して行ったと言う。
そして明かされた事実。
マルグテ夫人は度々父であるサンハデス王にお金の無心をしていたらしい。
サンハデス王が病床に着くと、更にそれは酷くなり、サンハデス王の私物を持ち出し、アメリカで換金していたのだと言う。
私物だけれど、王の物は民の物だ。
あるべき物がない、金が異常な減り方をしている、それらにマルグテ夫人が関わり、ヘフゲン氏の事業資金になっていると知ったユルリッシュ殿下がそれを諌めに行ったのだそうだ。
既に手元にある物は返さなくてもいい、しかし金輪際、1アロンたりともヘフゲン夫妻にお金は渡せない、と。
それに怒ったのは、ヘフゲン氏だ。大きな資金源だったらしい。
口論になり揉み合いになり、ヘフゲン氏はユルリッシュ殿下を撃ってしまったのだと言う。
戴冠前とは言え、王となる者を撃ってしまった、動揺したヘフゲン氏はエレメイに後処理を頼む。
ヘフゲン夫妻は、いわゆる闇医者に治療を頼んで欲しかった。
しかし、エレメイは無言でユルリッシュ殿下に5発もの銃弾を撃ち込んだと言う。
絶命したユルリッシュ殿下を、如何にもゴロツキに襲われたと見せかけてスラム街に放置したのは、間違いなくエレメイだった。
「ハルルート、すっかり意気消沈しちゃって」
恵里佳は笑顔で振り返る。
「恵里佳、まだ式を挙げていなくてよかった」
ハルルートは肩を落として言った。
「僕は王位継承は辞退する、君を王妃にすることはできない。今なら無関係に戻れる。ご両親と日本へ戻るといい……」
「ハルルート、あなた、馬鹿ね」
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