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名刺に記載された会社の所在地は渋谷だった。会社名と男の見た目で推測するとマスコミ、広告、IT....そしてまだ新しい会社。
その男の顔と名刺に視線を交互に向け肩書きを見て思わず瞬きを繰り返した。
【“代表取締役社長” 九条 梓 (Kujyo Azusa) 】
コンサルタントをしていると上層部の人間と話すことはよくある。
だけど、
直接社長から声をかけられたのは初めてだった。そして、何よりも私を見る表情が胡散臭い。
思わず脳内でキーボードを叩くほど切り取って貼り付けたようなエガオ、腹の中が読めなくて関心も薄れる。
関わりたくない、というのが本音。だけどこうして声をかけられた以上スルーすることは社会人としてできない。
『……どういった御用件でしょうか?』
警戒心が強まる。だけど一方でその男は『シュクレの緒方』と馴染みの名前を出した。
『緒方さんから宮内さんのことを聞きました』
『緒方さん、から?』
『はい。いいコンサルタントがいる、と。』
にこり、と笑う顔に、『それはどうも』とこちらも負けじと微笑みを返す。
だけどそのエガオが崩れ、その男は真面目な顔でこう切り出した。
『うちに来てくれないか』
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