溺れる熱

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* 「…ふぁ~…、」 「眠そうだね。」 結局あの後、九条さんの口撃に負け、朝方まで彼に翻弄され続けた。気がつけばカーテンの隙間から白い光が差し込み不満だらけの心を吐き出す余裕もなく眠りについた。 「……シュクレ、忙しい?」 木下さんは心配そうに眉を下げて会議後の少し乱れた椅子や机を綺麗に整頓している。私もそれを手伝いながら、わずか2時間睡眠の身体を叩き起こして、なんとか今日という1日を終えたところだった。 「…そうですね、」 ホワイトボードを消しながら苦笑いを返す。その後の言葉が続かなくてどうしようかと考えあぐねていると、コンコンと会議室がノックされて九条さんが入ってきた。 「お疲れ、木下少しいい?」 チラリと一瞥した視線とぶつかると何故か鋭さが増した。「お疲れ様です」と、表面上だけの笑顔を貼り付け、会議室の整頓を続ける。 「あまり無理しないで?」 木下さんは去り際に頭をポンポンとして心配そうな目を向けた。私は色んな意味で申し訳なく思いながら小さく返事を返すことしかできなかった。
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