溺れる熱

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「何っ?!」 「なんで」という言葉は彼に通じないらしい。 ジャケットを脱がされシャツのボタンを素早く外そうとする手と攻防戦が始まる。 「梓っ!!」 「無理。」 何が無理なのかよくわからない。 けど、九条さんが怒っている理由は多分私に纏わることなんだと思う。 「…どうしたの?」 その首に腕を回し大きな身体を抱きしめる。 九条さんの腕が苦しいほどキツく背中を抱きしめ私は彼の頭を撫でながら彼の気を逆立てないように訊ねた。 「…無防備すぎなんだよ、」 「へ?」 肩に埋まる顔が弱々しく呟く。吐き出された音には行き場のない声と気持ちが混ざり合っていた。 「……昼休憩の時寝てたろ?」 社長室と経営企画室の間には談話室のようなソファー、テーブル、テレビのある部屋がある。会議室が使えない時、幹部達がここで会議をする場所で、お昼を持ってきた時は木下さん達とここでランチをしていた。今日は眠いこともあり外でのランチを断ってその部屋で仮眠を取っていたのだ。
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