溺れる熱

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九条さんは“ごめん”と言いながらブラウスのボタンを止め始めた。 「……頼むからもう少し警戒しろ。」 俯くと普段見ることのない旋毛が見えて落ち込んでいる彼が可愛く見える。 「…男は馬鹿で単純なんだ。」 元はと言えば、九条さんが昨夜寝かせてくれなかったことが原因で。仮眠を取るに至った理由もそこなのに。 「…知らなくていい、」 抱き寄せられた身体はいつもの寝る体制に入る。後頭部に回る手が何かから隠すように胸の内に寄せた。 「…俺だけが知っていればいい、」 九条さんだけが知っている私って、…… どう考えても、はしたなくて誰にも見せられない姿しか思い浮かばなくて。 甘ったるい声と言葉に堕ちてゆく欲に塗れた女で。 快感を覚えてしまった躰で。 彼を受け入れ慣れた口は違和感もなく彼に合うように記憶されてしまっていた。
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