溺れる熱

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走りはじめたキーボードが急ブレーキをかけた。 その言葉の展開を予想しながら再び文字を羅列する。 「行きません。」 面倒なのはごめんだ。 緒方さんを前にしてこの人が普通に接してくるとは思えないもん。(前科有りだし。) 「残念。“宮内さんが行くなら”っていう条件だから、」 「は?」 何を勝手なことを、 「強制連行。」 肩に頭を預けて甘えてくる男は態度とは裏腹に悪意に満ちた貌をしていた。 「い・や!」 そうは言ってもきっと緒方さんからも声がかかってくるだろう。 結局「分かった。」と返事をするしかなさそうで。 渋々それを承諾する破目になった。 「逃げるなよ?」 「逃げません。」 「……へぇ、?」
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