溺れる熱

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「来週の木曜日は?」 シングルベッドで体を寄せ合って今夜もまた共に眠る。 肩肘を付いて私の顔にかかるサイドの髪を耳に掛けながら九条さんは提案した。 「……木曜、」 さっき仮眠を取ったせいで午前3:00にも関わらず目は覚めている。 「多分、だいじょ……ばない、かも、」 「どっちだよ、」 寝室に響く擽ったい笑い声。 九条さんは笑いながら、「ん、」と腕を伸ばした。 「一応、未玖と約束があるの、」 伸ばされた腕に誘われるまま身体を転がす。 「仕事の状況次第だけど、」 平日の約束はお互い“仕事優先”だ。 ただ、来週、月頭はバタバタと忙しくなるし会えたとしてもお泊りのパターンという可能性が高い。 九条さんは自身のスケジュールを思い出しているのだろうか。無言で、だけど頭を撫でてくれる手はひどく優しかった。 「そういえばさ、」 話題は切替り、取り留めのない会話が飛び交う。 「今夜は絶対寝る」と決めていたのに思いの外会話が弾み気がつけば明け方になっていた。 「おやすみ、」 朝の光が差し込む中、柔らかい温度に包まれて漸く目を閉じた。背中に回る圧力に、異なる2つの心音に安心しながら眠った。
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