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『込み入った話がある。』 山崎さんがそう漏らしたのは今から数時間前のことだった。全国的に梅雨入りが発表され、連日悪天候が続く中、「今年もあと半年か、」なんて悠長なことを思っていた。 『今夜時間貰えるか?』 私は小さく頷き会議室を出て何事もなかったかのようにその日の業務を終え、指定された料理店に向かった。 「お疲れ様です、」 「あぁ、お疲れ。悪かったな。」 「いえ、今日は特に予定もなかったので、」 適当に注文をしてくれていたのか、私が席につくとすぐにビールと皿がいくつかテーブルに並んだ。 「とりあえず、乾杯ですね、」 「そうだな。お疲れさん。」 品の良いビアグラスをコツン、と合わせて 綺麗に盛り付けられたお刺身やサラダに手を伸ばした。 「山崎さん、お話しって?」 少しお腹が満たされ始めた頃、私は本来の目的である話題に触れた。 山崎さんは少し険しい顔をしながら「実は、」と話を始めた。
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