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そんなこと言わんでいいやろっ!と、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
殺気じみた辛辣な視線が後ろから突き刺さる。
「大事なもんなんやからもう忘れたらあかんで。」
壱はこれが祖母からのプレゼントだということを知っている。そしてその祖母が亡くなったことも。
当時泣いていた私を励ましてくれたのは壱だったから。
「予約した時、俺の番号伝えといたから電話くれてん。ほんで今さっき貰ってきたとこ。」
むにっ、とほっぺを引っ張った壱は「分かったか、」と念押しをする。
「…ご迷惑をおかけしました、」
「ほんまやで。次はれぇの奢りやからな。」
ペシン、とおでこを叩かれ「はいはい」と頬を膨らませる。私に奢れって言っても結局は出させてもらえないんだろう。
「ちんちくりんのくせにこんなに手ぇかかる女、面倒やろ?」
その言葉は私より奥にいる人物に向かって飛び出して。壱の顔は苦笑いをしながらもどこか挑発的だった。
「……面倒?可愛くて仕方ないよ。」
ピリピリとかバチバチとかそういうんじゃない。
なんというか、
この2人、根本的に合わない気がする。
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