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「…近々決着つくんや。その時、もしかすると犯人はれぇに近づくかもしらん。やから見ておきたかってん。」
壱の顔は捜査官だった。
マンションのエントランスを見渡しながら鳴り出した電話に対応すると短く返事をしてポケットにしまった。
「ほな、戻るわ。」
「…うん。」
「心配すんな。こっちは国家やで?」
よほど不安な顔をしてしまったのか、壱は宥めるように諭した。私は壱の言葉に頷くも、姿の見えない犯人が、どう動き出すのかと考えると正直気が気でなかった。
「ねぇ、どうして私なの?」
そもそもそこが疑問点だ。私はシュクレと契約をしている外部の人間だ。山崎さんは私をシュクレの人間のように扱ってくれてはいるが、根本的なことがおかしい。
「…なんや、そんなこと知らんかったんか?」
壱は驚きを隠せないように目をまん丸にしている。
私自身あまり聞いてはいけない気がしたから捜査について山崎さんにも壱にも聞いたことが無かった。
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