0と1

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ここにきて初めて知った。 もしかすると山崎さんは初めからこの事を知っていたのだろうか。 だから、私を気にしてくれて。 「ちゃんと戸締りせぇよ。」 「はいはい。」 「モニター確認してドア開けろや。」 「うっ、……返す言葉もございません。」 「バレてんで。こいつテキトーやなって。」 初めからバレてたのか。 確かに軽く返事をして通したけど。 「それは、その……?!」 一瞬だった。 視線を落とした先に見えた品の良い革靴。 その革靴の主に顔を上げると 仄かな熱が唇に広がった。 閉じられた瞼が薄っすら開き ゆっくりと離れていくその顔を見つめた。 「……え?」 何が起こっているのか分からなかった。 あまりにも突然で。 だけど1秒後にはいつもより少し穏やかに笑う壱は照れ隠しなのか、私の頭をわしゃわしゃと乱した。 「これでチャラや。」 「な、なにがっ、」 「忘れ物の配送料。」
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