0と1

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【ご馳走さま。行ってくる。梓】 朝の光が差し込むリビングのテーブルに貼られた付箋には綺麗な文字が記されていた。 男性で文字が綺麗な人ってとても目を惹くけど、九条さんの字は癖のない“お手本”になりそうな文字だった。 「…はーい。」 その付箋をペリッと剥がしながら冷蔵庫に貼り付けた。ゴミ箱に捨てようか迷ったけど捨てられないのは、今ここに彼が居ないから、だろう。 いつ帰ったのかすら分からなくて、 いつ眠ったのかも知らない。 寝室には入って来なかった。 もしかすると寝ないで仕事に行ったのかもしれない。私はまだ眠い頭を必死に起こしてお湯を沸かした。 …もやっとするのはどうしてだろう? 壱にキスされたから? 逆恨みされる理由がしょうもないから? それを山崎さんに隠されたから? 九条さんが何も言わずに帰ったから? 分からない。 だけどこの胸の靄はどうしたら消えるのだろう。 無理矢理にでも理由を付けたい私は都合のいい理由 を探しながら朝食の準備を始めた。
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