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込み上げてくるものは
九条さんの高級なコートを遠慮なく濡らす
九条さんの手が確かめるように何度も何度も頭を撫でてその感触に、撫で方に身体が震えた
胸の奥底から湧き上がるのは喜びに似た感情で
ーーーーもっと強く抱きしめて欲しい、
そんな我儘な気持ちがむくむくと大きくなって
コートの裾を掴んだ手を背中に回した
それと同時に身体に回る圧力が強くなり
期待に応えるかのように、彼は何度も抱きしめ直してくれて
“ここにいるよ”、と
言ってくれている気がして
“あいたかったよ”と
言ってくれている気がして
九条さんがいつものように私の首筋に顔埋め、耳を擽るように鼻を擦りつけて
その仕草が嬉しくて、堪らなくなって
私はゆっくりと腕の中から顔を上げた
「……玲、」
愛おしい
その声も、その表情も、全てひっくるめて
もっと強く抱きしめたくて
「……ん？」
その声が僅かに震えていることは気づかないふりして首を傾げた
「……帰ろう。」
おでこにくっつく熱が甘える
今にも泣き出しそうな顔をした彼は淡く微笑んだ
「……早く帰ろう、玲。」
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