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逃がさない、と言わんばかりに顎を掬われ唇が塞がれる。甘さのカケラを宿した鋭い瞳が私を射抜いた。
その瞳に見つめられれば動くこともできなくて。
唇の隙間から入り込む舌。彼がねじり込むより先に口を開けた。絡み合う舌が身体中の神経をそこに集中させる。
上顎をなぞられて唇の端から漏れる欲情した声が恥ずかしい。
根本から吸い付かれるような激しいキスに脳が痺れた。
九条さんの手が器用にコートのボタンを外す。片手で難なくコートを脱がしかかる彼は一瞬でも唇が離れるのを惜しむらしい。
後頭部に回る手が離れようとした私を遮るとまた深い部分まで舌がたどり着いた。
九条さんの首を覆う上品なネイビーのマフラーを外しながら深く絡め取られる舌に意識を向ける。
九条さんの手が背中を撫で、腰を撫でる。ニットの上から伝わる熱が更に気分を煽った。
きっちりと襟元を閉められたボタンを外すと、
ふ、と放された唇が可愛いリップ音を立てて啄まれる。
まるでその手を邪魔するようなキスの嵐は九条さんが私を抱き上げたことにより終了した。
「…っ!、く、靴、」
「いい。」
靴を脱ぐ暇すら与えてくれず。
彼は、玄関にお互いの鞄と私のコートを残して迷うことなく寝室に向かった。
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