居場所

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昨夜語り明かして抱き合って眠ったベッド。初めて九条さんに抱かれたのもここだった。 まるで私を待ちわびていたようにそのベッドが私を受け入れる。 少しでも衝撃を与えないよう、優しく私を降ろした九条さんは踝の辺りにあるファスナーを降ろしショートブーツを脱がせた。 中途半端にボタンが外されたコートがとても不恰好で。だけど、彼の顔はこの上なく柔らかくて、優しくて。 「……玲、好きだよ、」 額を合わせて目を細めて彼は言う。 「もう、ダメかと思ってた。だから、こうして触れ合えることが奇跡だと思う。」 最後に彼に抱かれたのは、パーティーの翌日だった。ただ、感情をぶつけられただけの虚しい時間。 それを思い出したように彼は躊躇いながらあの日のことを教えてくれた。 「……あの日は……玲が戻ってきても落ち着かなかった。…玲が遠くに行きそうで、……離れていきそうな気がした。そしたら案の定アイツから連絡が来て、……あぁ、そうかって。結局俺がどれだけ想っても全部上部だけなんだって思うと………壊したくなった。だからってしていいことと悪いことがあるのは分かってる。けどどうしようも抑えきれなかった。……ごめん。酷いことしてごめん。怖がらせてごめん。許してほしいとは思わない。許されるとも思ってない。……けど、…愛することを許してほしい、」
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