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あの日傷ついたのは私だけじゃなかった。むしろ九条さんの方が大きく傷ついていた。
そして今もそのことを後悔して、こんな風に傷ついている。
これ以上先に進むのを躊躇うように
九条さんはこの距離をなかなか縮めようとしない。
さっきまで欲望を露わにしていた目も今では不安が入り混じり、どこか怯えているように見えた。
「…あの時は梓といる日常が当たり前になってて、それが壊されてしまうと思うと居ても立っても居られなくて、……でも彼を手放す覚悟もできてなかった。日本から逃げた私を受け入れてくれた彼を簡単に切れなかったの。……本当にごめんなさい。私こそ許されるとは思ってない。」
「違う。俺がつけ込んだんだ。玲の状況を利用した。」
「ううん。私が弱かったの。梓の気持ちを知りながらそれに甘えて胡座をかいてた。だから……罰なの。」
そう、罰なの。
九条さんの気持ちを考えなかった罰。
浮気という許されない行為。
それを自分で認めるのが怖くて、素知らぬふりをしていた大きな罰。
「……だけどね、貴方に愛されることが私の幸せなの。だから……許されるならいっぱい愛してほしい。」
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