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言いようもない気持ちが込み上がり、頬を伝うものを隠すように両手で顔を隠した。
こんな風に誰かを求めたことがなかった。女として愛されたいと願ったことがなかった。
それなのにこの男は私に教えたんだ。
愛されることの悦びを、女の歓びを私に植えつけた。
「……っ、……玲、」
いつも大切にしてくれた。
たくさん愛をくれた。
それは今になって彼との時間を思い出せば思い出すほど身に染みて感じる。
あの日のように
愛されたい、と何度も願った。
心が求めた
貴方を
貴方の体温を
こうして触れてくれることを待ち望んでたんだ。
「……許すも何も、…俺は玲が可愛くて仕方がないんだ、」
顔を覆った手を九条さんはそっとはがした。濡れた目尻を拭き取るようにキスをして、濡れた顎を手の甲で拭った。
「…できるなら、俺以外を映して欲しくもない。凌や雅どころじゃない。未玖ちゃんですら恨めしいと思う。」
馬鹿だろ?と自嘲気味に笑う彼に首を横に振って否定する。未玖に嫉妬してくれるほど、私は愛されてるんだ、と思うと嬉しくて少し恥ずかしかった。
「……欲しくて堪らなかった。ずっと 心が欲しかった。」
九条さんは左胸の少し上をトンと付いた。そして少し安心したように笑いかけてくれた。
「……もう、全部俺のもの。……やっと、俺だけの…、」
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