居場所

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九条さんに分かって欲しかった。 ちゃんと伝えたかった。 私はもう貴方だけのもので、 完全に貴方に堕ちてしまってることを。 貴方無しじゃいられないことを。 ーー玲、 初めて呼ばれた時からどこか自然だった。貴方の隣にいる自分にも違和感がなかった。 共有する時間が長くなればなるほど貴方という人間の魅力が浮き彫りになり、いつの間にか私の心に住み着いて 「……玲、愛してる、」 曝け出したのは身体でなく心。 お互い隠していた部分を今は恥ずかしげもなく見せている。 恥も外聞も捨てて、 ただ、貴方だけ、と伝えたくて。 「……愛してる、 梓」 直に感じる体温は切なくて熱い 抱きしめ合った素肌から伝わる少し速い二つの鼓動がまるで隣で寄り添って歩くようにぴったりと重なった。 離さないで 離さないよ どこにも行かないで 行かない ずっと傍にいる 此処に居る 「……玲、」 あの夜 引き止められなかった手は 硬く絡みあって握りしめられている。 包み込むように抱きしめ合う素肌はあの時の私たちを慰めているようだった。 触れられれば熱を持ち、胸の奥が震える。それだけで泣きたくなるほど嬉しくて、胸が詰まる。 初めて自分が自分で良かった、と 胸を張って言えること。 貴方に出逢って良かった、と 貴方を見つけて良かった、と 貴方がわたしを探し出してくれたから 貴方が諦めないでくれたから 私は今此処に居られるんだ、
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