嘘つきは恋人の始まり。

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「イヴは8時に横浜のロイヤルパークホテルのロビーな?」 今年も残り10日ばかりとなった。私たちはあの日からお互いの家を行き来している。 一人で過ごす日もたまにあるけど、仕事が終わるとどちらかの家で過ごすことが殆どだった。以前は私の家に入り浸っていた九条さんも最近はよく家に呼んでくれる。 「え?イヴ?」 「ん。」 九条さんはお風呂から出てきた私を呼び寄せて膝の上に乗せると突如クリスマスの話題を振ってきた。 なんとなく一緒に過ごすとは思っていたけど、まさか横浜のホテルなんて想像してなかったから喜びより驚きの方が大きい。 「泊まりだから。」 「え、」 これまたびっくり発言に目を丸くする。そんな私を九条さんは不思議そうに見つめていた。 「……嬉しくない?」 「え?」 「……もっと喜ぶかと思った。」 若干スネ気味な九条さんは肩におでこを付けてグリグリと押し付けてくる。甘えたいモード全開らしく、お腹に回る手がぎゅ、と強くなり、体重をかけると私を二つ折りにした。 「ちょ、苦し、」 「ははっ、」 外では全く見せない子どもみたいな彼の一面は日に日に幼くなる。 だけど、そんな姿も可愛いと思ってしまうあたり重症なんだと自覚している。
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