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ふわふわ、とした気持ちが一瞬で陰りができる。ゆっくりと離れていく身体に緊張感が走った。
不安げに見つめる私を九条さんは真剣な目で見つめている。
徐に立ち上がった彼は寝室のドアを開けその奥に消えていった。そして、すぐに戻ってきて私の隣に腰を下ろす。
「開けて。」
渡されたのは名刺より少し大きな赤いリボンのついた白い箱だった。
その箱をあけると中にはもうひとつ、箱があった。
それは、ベルベット素材の高級感漂う濃紺の箱で。
「……これ、」
蓋を開けると目に飛び込んできたのは同じ形状の二つのシルバーリング。
シンプルなウェーブ状の細身のデザインはオーソドックスだけどお洒落なもの。
左側の指環は飾りも何もないけど大きさがあるだけ、とても存在感があった。
右側の指環は形状に沿って小さなダイヤモンドが散りばめられており、その中央には周囲より少し大きめのダイヤモンドが一粒佇んでいて。
「もっと目立つ 指環でも良かったけど、玲にはこういう可愛いらしい 指環の方が似合うと思って。」
九条さんは異彩の放つ指環を取り、私の右手を持ち上げると、薬指にそれをゆっくりと通した。
「……今日からちゃんと始めたいと思うんだ。その、節目というか、区切り。」
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