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一息に言い切ると、彼はさも当然とドヤ顔になった。その顔にふ、と笑みを零す。
「あはは。」
少しズレた考えだな、と思う。
だけど、九条さんの考えそうなことだと言えばそれまでで。
九条さんの胸に顔を埋めて、声を押し殺して笑った。
「……九条玲か。なんか強そう。」
宮内って苗字気に入ってるから変わるのはちょっと名残惜しい。
だけど、職場だと旧姓で仕事をしている人も多いし、そこは使い分けか。
「いい響き。早くなってよ、九条さん。」
「えー。」
貴方と歩む未来を想像する。
今となんら変わらないものはないかもしれない。
だけど、こんな風に貴方の隣で笑い合っていられることを願うばかりで。
「…梓は子ども好きなの?」
「子ども?……どうかな。考えたことない。でもちっちゃな玲がちょこまかしてたら楽しいんだろうなって思う。」
九条さんの顔は穏やかだった。
考えたことのない未来の話でもこれから少しずつ考えてくれればいい。
そして、いつかそれが現実になる日が来ることを祈る。
「でも、俺は玲が居ればそれでいい。子どもはいつか離れていくけど、夫婦はさ、ずっと傍に居られるだろ?俺は死ぬまで玲とこうやって一緒に居られればそれでいいよ。」
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