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酔った彼女は電車を降りたあとも、ふわふわした足取りで見てられないほど危なかった。
本人は大丈夫だと言い張るけど、階段から転げ落ちそうな様子に俺は呆れたように溜息をつく。
「ほら、足元気をつけて。」
次の電車が来るまでに改札を抜けたい。
そう思えば自然と足は早くなり、玲も辿々しいものの一段一段踏み外さないように手すりを持って階段を降りた。
漸く改札を抜け、駅の出口に立つ。玲は身体を震わせて背中を丸めると帰路に向かって歩き始めた。
俺はその様子を見て彼女の隣に並ぶ。さっきまで隣にあった温もりが消え、なんだか物足りなくて。
「ほら、手。」
キョトンとする玲の手を取り歩き始める。方向はこっちでいいのかすら分からないけど、間違ってたら違うと言うだろう。
だけど、玲が足を止めたことで俺の足も止まる。
「手、なんでっ、」
手を繋ぐことに抵抗があったのか?それも今更だな、と思いながら彼女の顔を見下ろした。
「も、もう平気ですっ、」
「何を惚けたことを言ってるんだ。」
「惚けてない、です。」
ここでもまた。
玲は拗ねたように唇を尖らせる。
「さ、寒さで覚めました!」
まるで上手い言い訳が見つかったとばかりにパァと目を輝かせて、手を離せと繋いだ手からすりぬけようとして。
「……分かった。」
そこまで言うなら仕方ない。俺は繋いだ手をそっと離す。だけど、ホッと安堵した様子の表情が気に食わなくてすぐに指を絡めて手をつなぎ直した。
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