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玲から「手を離せ」と非難の言葉を頂くが、こちとら全くその気はない。
なんなら抱き上げようか?と提案すると、本気で嫌がる彼女が少しだけ可笑しかった。
日付も越えたこんな駅の近くの道端で俺たちは何をしているんだろう、と思うフと笑いが込み上がる。
しばらく玲は文句垂れていたが、「酔っ払いの介抱」と受け取ったのか、大人しくトボトボと手を引かれて付いてきた。
俺は歩幅を合わせるように彼女の隣に並ぶ。玲は無言で歩き、俺も何も言わずに彼女の家までの道のりを歩いた。
玲の家は駅から徒歩10分圏内だった。酔っ払いの足でこのぐらいなら普段はもう少し早く着くだろう。
俺の家から車だと5分もかからない距離にある彼女の家。そのことがとても嬉しくて、だけどもうこの手を離さないといけないのかと思うと離れがたくて。
「…寒っ、」
寒さのせいにしてさっき電車の中でひたすら我慢していた欲求を吐き出すように、華奢な身体をぎゅうと抱きしめた。
玲は慌てふためいて身体を押し返してくるけど、俺は御構い無しに腕の力を強める。
「…酔ってる、」
基本あれぐらいじゃ酔わない。
というか、酒で滅多に酔うことはない。
「…大丈夫ですか?気分とか、」
そんな俺の言葉をまともに受けた玲にチクリと良心が痛む。
「コーヒー、」
少し身体を離すと、頬を赤らめてしどろもどろになる玲を見て、やばいな、と思った。
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