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酒が入って、警戒心が緩んだのか。
はたまたさっきまであんな風に密着していたからかわからないけど、玲は辺りをキョロキョロと見渡して何かを探しているようだった。
その間も俺たちの距離は変わらず傍から見れば抱擁している状態だ。
「こ、今度でいいですか?」
真面目に律儀に勝手に取り付けた約束を守ろうとする彼女。
眉を下げて、上目遣いで訊ねてくるその表情に堪らず彼女の顎を持ち上げた。
「今がいい、」
うん。今がいい。
もう少しこのままでいたい。
警戒心を緩めてくれたのは嬉しいけど、それはそれで面白くないと思う自分はとても面倒くさいと思う。
柔らかくて、冷たい唇が触れる。
ただ、合わせただけのキスなのに身体中一気に血が巡ったようにドクンと熱くなる。
触れた場所から仄かに香るのは日本酒の味。惜しむように唇を離し、閉じた瞼をゆっくりあげると驚いて目を見開いた彼女とばっちり視線が合った。
玲はフイっと目を逸らした。それが気に入らなくて、俺は彼女の両頬を包み込む。
「な、なにおっ、」
「キス。」
「きっ!」
「コーヒー、じゃなくて日本酒だったけど。」
包み込んだ頬がカーッと赤くなった。その反応が嬉しくて、少なくとも俺を意識してるからなんだと思うともっともっとという気持ちが抑えきれなくなった。
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