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凌を真っ直ぐに見つめて怯むことなく笑いかける彼女はその目をそのまま俺に向けた。
「申し訳ないが、プライベートのことなら」
「あらそう。ならいいわ。ここで言ってもいいならね。」
「すみませんが、もう時間なので」
意味深に笑う彼女に眉を顰める。凌は大きな溜息をついて彼女の相手をしない方向で身体を翻した。
「…これ以上、あの子に近づかないで。忠告よ」
彼女の言葉にハッと足を止めたのは“あの子”の指す答えが宮内玲だと咄嗟に思ったからだ。
「……凌、先行ってろ」
「は?」
「すぐ追いつく」
「……そこの入り口で待ってる」
地下鉄への入り口を指す凌に俺は「分かった」と頷いた。
「で、あなたは?」
「塚原です。玲の親友です」
気の強そうな女だと思った。瞬きひとつしない力強い目が俺を真っ直ぐに見つめる。
「遊びであんなことしないでもらえます?玲に浮気なんかさせたくないので」
「本気ならいいってこと?」
「九条さんなら他にも沢山良い人がいるでしょう?」
「俺の好きな人は彼女だけなんだ。悪いけど、塚原さんの要望には応えられない」
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