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塚原もよほど玲のことが好きなんだろう。
今日、彼女の口から“玲”以外の人間は登場していない。
もちろん、俺が玲のことを聞きたがっていることを分かっているせいではあるけど、玲のことをこれほどまで想ってくれる友人がいることに、俺は自分のことのように嬉しかった。
「あ、そうだ」
地下鉄の入り口まであと少しのところで塚原は立ち止まった。そして、徐に鞄を開けると中から一冊の雑誌を取り出した。
「これ!この記事は玲のことですか?」
それは半年ほど前に発売された雑誌だった。
表紙を見てすぐに分かったが、口が滑って杉山さんに玲のことを話してしまった記事が載っている。
「……あぁ、そうだよ」
「ここに“一目惚れ”って書いてますけど?そうなんですか?」
さあ、言え。と
無言の笑みが一歩近づく。
「九条さんと玲は確かに以前どこかで出逢っていた。だけど、過ごした時間は僅かな時間で、その僅かな時間であなたは玲を好きになった。当たりですか?」
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