最強の味方

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塚原の言う通り、過ごした時間は僅かなだった。 多分、数十分もなかっただろう。 だからその間に好きになってしまったのなら“一目惚れ”なのかも知れないけど、俺の場合は彼女に逃げられたことで気になり始めた、とも言える。 だから一目惚れか、と訊かれれば違うのかもしれないが、ただ、ここで「違う」と素直に答えればまた尋問されそうだから頷いておく方が得策だろう。 「……まぁ、そういうことになるのか」 「なんですか、それ」 「そこは想像に任せるよ」 はっきりと「うん」と言えば良かったものの、やはり塚原の口から玲に伝わってしまえば、と思うと素直に頷けない自分がいた。 俺の答えに不満そうな塚原を置いて、俺は地下鉄の階段をゆっくりと降る。 「私、丸ノ内線なんで」 塚原とは路線が違うらしく、改札を通ってすぐのところで別れることになった。 最後は俺の背中を押すように「私は九条さん推しですから!」と大きな声で宣言された。 「推しってなんだよ」 「推しは推しです!九条派です!」 よく分からない派閥だな、と思いながら 階段を降りていく背中を見送った。 その背中は少しだけ嬉しそうで、 彼女は一度も振り返ることなく階段を駆け下りていった。
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