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塚原の言われるままカフェに向かい、玲を無理矢理車に乗せた。
あのままだと、玲が塚原を問い詰めようとするような気がしたからだ。
とは言っても窓の外をジッと見て、全く見向きもしない彼女。窓ガラスに映し出される横顔は戸惑いを隠せない様子だった。
だけど、玲の自宅の前に来た時だった。
「九条さん、お時間まだありますか?」
「ん?うん、あるけど」
「……連れていって欲しいところがあるんですけど、」
玲が何かを決意したように俺を真っ直ぐ見据える。
「……どこ?」
「えっと、……」
玲が連れていって欲しい、という場所は郊外にあるディスカウントショップだった。
その道中で、弾みはしないが玲と会話をした。とりわけどうでもいい内容だったけど、さっきまでの重苦しい空気が幾分かマシになった。
日曜のこの時間。
駐車場には家族連れが多く、笑い声が溢れていた。
「こら!あぶないでしょー!ちゃんと前見なさい!」
「ねぇ、ママー!おかしかってぇ」
「ぼく、アイスがいいっ」
俺たちを追い抜かして笑いながら走る子どもたちがとても眩しくて駐車場を駆け回る彼らを玲は柔らかな眼差しで見つめていた。
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