プロポーズ

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* 『前比225%増か。さすがだ』 毎月の定例会 九条梓と別れた後、とある居酒屋に足を運んだ。 『大袈裟ですよ。元の数字に戻っただけです』 二月はバレンタインのシーズン。菓子メーカーにとってその一ヶ月の売上が今年の売上を決めると言っても過言でないぐらい最大の山場だ。 その結果報告が先日行われ、 山崎慎太郎の頬は緩みっぱなしだった。 『大袈裟も何もない。実力だ。君を呼び戻して良かった』 さあ、飲んで。とグラスの半分は残っているビールにトクトクと継ぎ足して、本日何度目かわからない乾杯をする。 わたしが日本に戻ってきた原因が彼、山崎慎太郎から届いた一通のメールだった。 【力を貸して欲しい】 ちょうどその頃、私はパースで彼のお店を手伝っていた。 スタッフも常連客も優しく親しみやすくて良い人ばかりだけど、どこか物足りなさを感じていた。 羨ましかった。 目標を持って仕事をする彼が眩しかった。 そんな燻っていた私を頼ってくれたのが山崎さんだった。
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