一章 始まりの一日

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「だけど満月は、本が好きよね。本に夢中。よく図書館に行ってるもの。ねぇ満月」 流花は、優しく笑顔で満月の顔を見る。 そんな流花の横顔を見た陽奈子は、諦めたように笑って肩をすくめて笑った。 「それもそうね」 家の雰囲気が柔らかくなったところでちょうど、父親の竜二(りゅうじ)帰って来た。 「ただいまー。あれ? 今日は、早く帰ってこれたと思ったんだけど、皆もう食べちゃったの?」 「おかえり、お父さん。ゴメンね、待てなくて先に食べてる」 竜二は、ネクタイを緩めながらダイニングへ入ってきた。 お腹も空かせていて、食卓の鮭を見るなりグーと間抜けな音を響かせる。 陽奈子は、ちょうどよく食事を終えたので、竜二の茶碗と汁椀を手に取ると支度に取り掛かった。 「おかえりなさい。あなた、先に手を洗って 着替えてきて」 「竜二、おかえりなさい。満月が、あなたに聞きたいことがあるらしいのよ。後で答えてあげてちょうだい」 今までの話を知らない竜二は、小首を傾げるも洗面所へ行った。 満月がすっかり冷えた食事を全て平らげる頃に竜二は、ダイニングへ部屋着を着て戻って来た。 手をあわせて頂きますを言うと、鮭をほぐす。 その間にさっそく満月に話を聞く。 「それで満月の聞きたいことって何?」 ほぐした鮭とご飯を咀嚼しながら竜二は、隣に座る満月に話を促す。
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