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「あ、大したことじゃないの。お父さんって何か部活してた?」
満月は、自分の食べ終わった食器を片付けて竜二に聞く。
すると、満月の質問の意図を大幅に勘違いした竜二は、可笑しなことを言い出す。
「僕の会社に部活みたいな集まりは無いけど、飲みに誘われる時は、だいたい先輩が多いよ。いつも帰ってくるのが遅いのは申し訳無いけど」
咄嗟のことで、竜二の言うことが、満月には、すぐに理解が出来ない。
なぜ、飲み会の話になるの?
見かねた陽奈子と流花は、食後のお茶を準備していながら、キッチンからすかさず非難をする。
「あなた! 何の話してるのよ。満月が聞きたがってるのは学生時代の話よ」
「まったく竜二は、いつまでたっても困った子だねぇ」
満月は、どこかズレている父に苦笑いをする。
いつものことだが、笑ってしまう。
どこかズレていてのんびりとした竜二とせっかちで元気な陽奈子は、満月の小説にもコッソリ登場させたくらい名コンビっぷりだ。
今日のことも何処かのシーンで使わせて貰おうとソッと心に決める。
当事者の竜二は、流花に似た笑顔でのんびりと緩やかに笑う。
「そうなんだ。ゴメン、ゴメン。部活は、陸上部だったよ。走るのは得意だったから、短距離の選手だったんだ」
満月は、意外だと思った。
普段は、天然でふわふわとした竜二からは、想像が出来なかった。
目を丸くしている満月の目の前に淹れたてのお茶を出して、陽奈子が過去を懐かしむような顔をした。
「そうねぇ。あなた、走るのだけは、速かったわねぇ。他のスポーツは、さっぱりだったけど。県の大会まで行ったくらいだものね」
「お父さん、そんなに足が速かったの?」
さすがに、大会に出たというのは満月の想像を超えていて、驚きを隠せなかった。
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