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「野球? うーん、草野球とか体育の授業なんかでならやったことあるけど」
またしても、竜二のスポーツ好きのような発言。
満月は、父の意外な素顔を発見したような気分で、素直に嬉しかった。
加えて、これで小説もスムーズに書けるかもしれないと浮かれていた。
満月の頭の中は、小説のことでいっぱいになりかけていた。
浮かれた満月を竜二の言葉が、呆気なく現実に引き戻した。
「それがね、不思議な事にちっともバットにボールが当たんないだよね。ボールも思った方向に投げられないし。実は、ルールもよく知らないんだよね。エヘヘ」
照れ始めた竜二を見て、これには流石に、満月をはじめ家族全員、溜め息をつくしかなかった。
これ以上は、埒があかないと陽奈子が満月にアドバイスをした。
「満月、野球のことが知りたいなら学校のお友達に聞きなさい。お父さんじゃ聞いても無駄よ。野球部なら入ってる子、たくさんいるんじゃないの?」
陽奈子の言葉に竜二が、今頃になって満月の聞きたいことの意味を察して、話を蒸し返す。
「満月、野球のことが聞きたかったのかい? でも、なんで? 野球部のマネージャーになりたいとか? まさか、野球部に好きな子がいるとか? ねぇ陽奈子、昔を思い出すよね! 満月、僕は満月の恋を応援してるからね!」
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