二章 変わりたい

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弱気だった満月だが、チャンスは翌日に巡ってきた。 満月は、昼休みを利用して、借りていた野球のルールブックを図書室へ返す。 返却時に司書の先生に珍しいと呟かれた。 恥ずかしくて顔が熱く仕方がない。 先生には、他意は無いのだろうが、小説を書いていることを誰にも知られたくない満月は、過敏に反応してしまう。 満月は、返却を終えると足早に図書室の奥へ歩いた。 図書室は、満月にとって自室のようなもの。 毎日通って入学一ヶ月で覚えた図書の配置。 小説を置いている棚にも迷わず足を進められる。 今日は、純粋に本を楽しむために図書室に来た。 自分じゃない誰かになって、自分以外の人生を知りたい。 満月は常にそう思っている。 今日は、誰になろうか。 沢山の本を前にすでにワクワクしていた。 「丸谷じゃん」 名前を呼ばれて、本が整列している棚から目を離すと近藤がいた。 昨日の今日で近藤と話をする機会が出来るなど、思っていなかった。 今朝、満月が学校に来ても近藤は、特に反応がなかった。 だから、満月は、そういうものなのかと昨日のことは、気にしないことにしていた。 話をかけられれば、何かやましいことがあるわけでは無いのに、何故だかたちまちに緊張してしまう。
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