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「伊佐見君は、野球部だったよね? 野球ってどんな時が楽しい?」
満月は突拍子もない聞き方を後悔する。
急な質問に近藤は、首を傾げたが、満月が慌てて
「練習がキツそうだから!」
と言い訳をすると納得していた。
近藤は腕を組んで少しだけ思案し、すぐに語り出した。
「バッターボックスに立ったときは、バッテリーとの戦略の読み合いが、シビれるっていうか、楽しいかな。それで、外野の頭を抜いたりなんかしたら最高に気持ち良い。守備とかも難しい球が捕れた時には、イチロー超えたかもしれねぇって思う」
近藤は、バットを振ったり、ボールを投げたりジェスチャーを交えながら話をする。
満月は、大きなジェスチャーに戸惑いながらも、本当に野球が好きなんだなと感心する。
陽奈子の言っていた
「好きだから上手くなりたい」
という気持ちが近藤から溢れ出ている。
満月は、熱く語る近藤に言葉には言い表せ無いような感情を微かに抱いた。
それは、憧れや羨望の類いようなものが複数入り交じったむず痒い感情だった。
あまりに熱をおびて語る近藤だったが、図書室では目立つ。
棚を挟んでも感じた周りの視線で近藤は、ようやく落ち着きを取り戻した。
「悪い! 話しすぎた。……引いたよな?」
近藤は、なるべく小さな声で満月に謝る。
そして、謝られた満月も頭を下げた。
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