二章 変わりたい

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「これで良いかな」 満月は、ファミレスで思いついた文章を忘れない内にアップした。 連絡先を交換した満月と近藤は、たった数週間で、良い友人関係を築けた。 共通の趣味があるというのは、満月にとっても、性別の違いや自分の自信の無さの壁を感じずにいられる。 なにより、良い友人関係だと満月自身も思えている。 しかし、満月は投稿小説を書いていること。 近藤は、投稿小説を読むことを話せていない。 これらは、秘密のままだった。 いつか言おう、いつか言いたいと思いながらも、お互いにタイミングを逃し続けている。 今日は、学校近くのファミレスで近藤と待ち合わせているところだ。 テスト期間中でテスト勉強を一緒にしようということだった。 テスト勉強と言っても、授業中に居眠りの多い近藤が満月のノートを写させて貰うというだけ。 近藤が、ノートを写している間に満月は、他教科のテスト勉強をする。 近藤が写し終えると雑談や読書談義に花を咲かせる。 これが、この三日間で出来たルールのようなものだ。 近藤は、部活が無いことをいい事に、テスト期間中は、いつも教室で友人と話し込んでいる。 満月は、少しだけ羨ましくなるものの黙って、先に待ち合わせのファミレスへ行く。 その間に小説を書き進めるのもお約束だ。 満月は、いつも同じ窓際の席で待っている。 外の景色が見えやすい四人がけの席だ。 テスト期間は、どこの学校も同じ頃合いにやってくる。 満月の学校のものとは違う制服を着た生徒達を、ガラス窓越しに見送る。 皆、楽しそうに帰っていくのを満月は、眺めている。 その一時が、満月の創作意欲に繋がり、満月の好きな時間でもあった。 「丸谷、お待たせ。いつも悪いな!」
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