二章 変わりたい

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その姿をあろうことか、夕食の準備が出来たため近藤を呼びにきた母親に見られた。 「あんた…何やってんの?」 そんな赤っ恥をかくまで、近藤は悩んでいた。 満月は、夕食を終えて勉強机に筆記用具や教科書を広げていた。 ただ、手にもっているのはペンではなくスマホ。 勉強机に突っ伏して投稿小説のことを言い損ねたと反省している。 満月もまた、近藤に言えない理由が増えていた。 読者に恋をしているからだ。 対人関係で悩んでいる読者の優しさが伝わり恋愛感情になってきたのだ。 性別に嘘がなければ『彼』なのだが、友人の一人に人見知りの女の子がいるらしい。 その彼女に対して失礼のないようにと常に、相談がくる。 満月自身も人見知り故に、会ったこともない彼女の気持ちが自分のことのように分かる。 だからこそ、上手く相談にのれるのだろうと思っている。 しかし、相談相手を相談にのる内に好きになるだなんて、自分で書いている小説のような話になってしまった。 しかも、相手は性別以外は何も知らない読者だ。 満月はスマホを握りしめて 「ひなた君の気持ちが痛いほど分かる」 と独り言を言う。
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