三章 複雑な心

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満月は、近藤のなかで信頼できる人間だと腹をくくることにした。 決意をすると、気持ちも少しは楽になる。 ついでに、心置き無く投稿小説を楽しむことにした。 ひなたが凍子に想いを打ち明けるシーンは、自分のことを言われているようだ。 胸に熱いものが込み上げてくる。 涙を堪えるために、目をつむり目頭をギュッとおさえる。 そのために、電車が停車したことにも気付かなかった。 「はよっす。あれ、チカ? 何してんの? チカがスマホ、弄ってる。珍しいじゃん」 野球部で同じクラスの高橋が乗り込んできた。 近藤は、肩をあげて驚く。 とっさにスマホをバッグの中へ乱暴に放り込む。 「おはよう! なんでもないって!ただ、ちょっと、あれだ。その……調べものしててさ」 高橋は、近藤の手がバッグを庇うように抱えていることを、目ざとく見つける。 近藤の手が所在なさげにバッグを触る。 イタズラ心に火がついた高橋は、ニヤリと不敵に笑う。 「本当に調べものか? ちょっと、俺に見せてみろって!」 そう言うと、高橋は、近藤のバッグをむりやり剥ぎ取り、スマホを取り上げた。 近藤は、自分の趣味が人目にさらされてしまうと焦る。 最悪、自分の恋心までバレてしまうかもしれない。 「やめろっ。返せよ」
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