三章 複雑な心

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高橋は、そういうやいなや、近藤の肩にポンと手を置いてきた。 「チカちゃん言うな。高橋、絶対に皆に言うなよ。絶対たぞ!」 近藤は、高橋に念を押す。 しかし当の本人は、あっけらかんとしている。 「いーじゃん。チカの新しい一面をお披露目すれば。ニュー近藤。ニューチカちゃん」 いつまでも、おどけた態度をとる高橋を近藤がギロリと睨む。 高橋は、さすがにやり過ぎた分かったのか、両手を上げて降参のポーズをとった。 近藤は、やっと安堵した。 「まぁ、ニューチカちゃんの発表は、チカ次第ってことで!」 高橋は、親指を立ててウィンクする。 近藤は、何にも伝わっていないことに、目を丸くして絶句している。 「じゃ、俺、先に部活行こうっと! お先に~」 逃げるように高橋は、走っていった。 もうすぐ、学校に着く。 きっと、朝練に来た部員達が着替えている頃だろう。 部活の前に疲れたくない。 しかし、姿が見えないとなると、高橋は何をするか分かったものではない。 朝から面倒なことになった。 怒りやら、恥ずかしさやらが近藤の心に渦巻く。 吐き出すように近藤は、高橋に向かって叫ぶ。
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