三章 複雑な心

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すみれは、近藤をジトリと見つめる。 「ふーん? 満月は何、聞いたの?」 すみれは、眉を垂れ下げた満月に話を聞く。 満月は、どうしたらいいか分からず、近藤に視線だけで助けを求める。 目が合うと、近藤は、黙って首を横に振り続けていた。 何も言わないでくれという声が、聞こえるようだ。 高橋は、近藤の背後に回ると、笑顔で後ろから羽交い締めにした。 急なことで暴れる近藤に、余計なことをさせまいと関節技を決める。 近藤は痛々しく叫ぶ。 いよいよ困った満月は、 「ごめんね、すみれちゃん。伊佐見君が困ってるみたいだし、私もよく分かんなくて…。えぇと、ごめんなさい」 と謝った。 すみれは、毒気を抜かれて思わず溜め息をついた。 「満月には、敵わないわ。なんか、こっちが悪いことしてるみたいになるもん」 そうそうに諦めたすみれに高橋は、面白くなさそうな顔をした。 「えー? すみれちゃん、もっと粘ろうよ。せっかくチカの……」 「だぁっー! 高橋、うるさいぞ!」 高橋が口を滑らせそうになるのを慌てて近藤が遮る。 「つまんないなー」 高橋がふて腐り、わざと頬を膨らませてひょっとこのモノマネをしている。 近藤は、高橋の空気の入った頬を両手で挟んで潰して、怒鳴る。 「つまんなくねぇよ。良いんだよ、これで何にもないんだから」
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