一章 始まりの一日

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「…ええと、すみれちゃん。どうして急に、男の子の話になったの?」 すると今度は、すみれが驚いたような表情になる。 続けてあからさまに困ったように答えた。 「だぁって満月、さっき良い出合いないかって呟いてたじゃない。だから私、満月もやっと彼氏を作りたくなったのかなって思ったのよ? 違うの?」 満月は、人の多くいる場所で妙な一人言を口走ったことについて、心の中だけで自分を非難した。 教室内で誤解を招くような言われ方をされて注目を浴びていることに気付き頬を紅く染める。 それから、少し早口ですみれに訂正をした。 「ち、違うよ、すみれちゃん。誤解させちゃってごめんね」 すみれが勝手に誤解をしたのだが、なぜだか、満月が謝る。 とはいっても、満月自身は謝ることに疑問は無く、至って自然な流れで出てきた言葉だった。 満月の優しさ故だが、すみれは眉を潜める。 「何で満月が謝るのよ。相変わらず、自己評価低すぎ! いつも言ってるでしょ? 満月に謝られるとコッチが悪者みたいになっちゃうって!」 すみれは、プクッと少しだけ頬を膨らませて可愛らしく怒る。 そんな風に叱られては、満月も何も言う事なく困ったように笑い、小さく肩すくめた。 その時に、ゴメンねとまた謝ってしまい、すみれにため息をつかれた。 「もう、しょうがないなぁ。でも、あんまり自己評価、低いと満月のこと好きになってくれる人が可哀相よ」
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