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episode224 奪い合い②
「――これは?」
「腹の子のDNA鑑定書です」
晴れて天宮家当主に君臨した
天宮征司の仕事は早かった。
「そんなことが可能なの?」
「ええ。しかるべき機関にお願いすればこの通り――見て下さいお義母様、100%の確率で貴恵のお腹の子はお義兄様の子です」
「それじゃ……」
「ええ、間違いありません」
そう。
間違いなく鑑定書は偽物。
「ああ、良かった!すぐに主人と拓海に知らせないと」
しかし嬉々とする九条夫人を前に誰が言えた?
「……お騒がせしてすみませんでした」
彼女の美しい実子は複雑な顔で頭を下げて
「あなたも災難だったわね。身体を大切にするのよ」
「はい、お義母様」
不貞の嫁はしおらしく微笑む。
「和樹さん」
「……はい」
そして僕
いまや何者でもない僕は
「あなた、天宮の代表を退いて正解よ」
叱られて終わりだ。
めでたいもんさ。
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