第1章 面食い王子の日常

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まじか。なんでこんなガラガラのトイレでよりによって真隣に来んの。 生憎、自分は隣に人が居ると小便が止まってしまうタイプの人間で、今まさにその状態である。…なにこれ凄く、嫌。 用を足すという、人間にとってそれはそれは大切で尊い行為を止められ、思わず小さく溜息を零した。 「ふぁぁ…、」それでもなお、苛々の根源であるそいつは呑気に欠伸なんかして、気持ちよさそうに用を足す。 この状況に一言物申さねば、そう思い目に少しばかり力を込め隣に視線を移した。 「ねぇ、あのさぁ……ーー、」 此方の声に吸い寄せられるようにそいつの視線が流れてくる。柔らかそうな髪の毛が、微かに揺れていた。 そして、視線が交わった。と、同時にグラウンドからはカキーーーーーンッ!と随分と当たりの良さそうな音が聞こえてきた。
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