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5
縮こまったミナイを見ると、思い出す。
僕の中で死に行く君。何もできずに、見守ることしかできなかった僕は、己の存在を呪わずにはいられなかった。機械であるのに。
世界中の誰よりも愛した君を、孤独のまま死なせてしまった僕は、なんてだめな相棒だったろう。
「許して欲しい、ミナイ。寂しかっただろう?」
僕たちは誰よりも密接な関係ではあったが、お互いに大きなへだたりがあった。
僕はツールであり続けようとして、ミナイは人であり続けようとした。命や存在を賭けてもいいほどに大事な相手だったからこそ、一線を越えられなかった。
僕とミナイとのプラトニックな関係が、尊く、美しかった。
まっとうな人生の終わりを迎えられていたのなら、ミナイは愚かな選択をしなかったと思う。
人生を全うし、老衰で死ぬ。数十年前は当たり前だった死は、この世界のどこを探しても見つからないだろう。
死という死が訪れる幸福は、希なのだ。大抵は、苦しみながら死ぬか、一瞬で死ぬかのどちらかだ。
「伝えてくれて、ありがとう」
落ち着くのを見計らってから、僕はミナイの肌に唇を這わせた。
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